No.92 「嘱託社員への退職金不支給」
 
 みなさん、こんにちは!

 「夏の思い出」というと、私の頭に浮んでくるのはこんな幼い頃の思い出です。
 「社会人になってからの夏の思い出」については、殆んど浮んで来ません。

 幼い頃の「夏の思い出」は、取り戻せない過去の日々や両親、幼友達の当時の顔などを懐かしく、そして甘酸っぱく思い出させるスイッチなのかもしれません。

 今年から団塊の世代が「社会人を卒業」し、「新しい生活」に飛び込む時期を迎えました。そして、今までの「サラリーマン」としての生活リズムと全く異なる生活のリズムに戸惑いながら、新しい「夏の思い出」を作り出すのに悪戦苦闘している方も多いのではないでしょうか。

 私の友人の某氏は、定年を迎えるとき"3つの不安"があったそうです。
 "ひとつ目は、毎朝決まった時間に起きて会社に行くという規則正しい生活が無くなるので、「生活のリズムが作れるかどうか」ということ。
 二つ目は、幾ら好きなことに打ち込める時間があるとはいっても、「趣味だけの生活は退屈で、やがて飽きてしまうのではないか」という懸念。
 そして三つ目は、やはり社会の中で働いていないと、「時代や時流に乗り遅れてしまうのではないか」という漠然たる不安"だったそうです。
 そして、何よりショックを受けたのは、定年後はずっと一緒に生活するはずの奥さんからの"定年後は何をするの?"との問いかけだったそうです。定年を迎える1年ほど前、不意に奥さんから"定年後は何をするの?"と訊かれ、 その瞬間、ムッとした感情にとらわれてしまったそうです。
 なにしろ私たちの世代は、子供の頃、「みんな貧乏」が当たり前だった時代で、「働かざるもの食うべからず」という考えが身に染み付いてしまっている世代なのです。だから、友人は、只でさえ"仕事もせずぶらぶらしているのになにか罪悪感さえ感じてしまうなぁ"と思っていた矢先に、追い討ちを掛けるように奥さんの言葉を受けてしまったのです。それはショックを受けたことでしょう。
 でもあとで、奥さんに聞いたところ、特に深い意味があって"定年後に何するの"と迫ったわけではなく、"単純に暇になったらどんなことをするつもりなのかしら?"と何気なく訊いてみただけだったそうですが・・・・・・

 夫の定年退職を目前にした妻の悩みとしてよく聞くのは、"定年になって夫が朝から晩まで家にいると思うとゾッとします"という声だそうです。 夫が現役の時、奥さんにとってのベストは、「亭主元気で留守がいい」と言われますが、夫の定年後も奥さんにとっては、やはり「亭主元気で留守がいい」がベストなようです。「夫に一日中家に居られると妻は困る」のです。
 つまり、夫が家に居るとなると、妻の手がその分余計にかかるわけで、「三度三度の食事の準備も毎日のこととなると煩わしい」ということなんでしょう。
 また、夫に家に居られると、妻が「気ままに好きなことが出来なくなる」ということもあるようです。勿論、夫が現役の頃、妻が気ままに好きな事をしていたということでもないのですが、やはり夫が家に居るとなると妻の行動にブレーキがかかってしまうのは間違いのないところなんでしょう。
 妻が外出しようとするとき… 夫に「何処に行くんだ?」、「何時に帰るんだ?」、「晩メシはどうなるんだ?」… 等々とうるさく尋ねられれば、妻にストレスがだんだんと溜まって行ってしまいます。それが原因となって「主人在宅ストレス症候群」なる病気が、夫の定年退職後の妻に増えているとも聞きます。夫の定年退職が妻にとってのストレス増大要因になることも確かにあるようなのです。
 だから、夫の定年後夫婦円満に過ごす秘訣は、現役のときと同様に、やっぱり夫が「家に居ない.......」ことなのかもしれません・・・・・・


 さて、 前回の「契約社員の業務災害」についての話、如何でしたでしょうか。
 今回は、「嘱託社員への退職金不支給」についての話をします。



――――――――――◆ 目 次 ◆――――――――――――――
○ 「嘱託社員への退職金不支給」
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 60歳以上の社員を嘱託として雇用していた会社で、雇止めをしたときに退職金支給問題でトラブルになったケースがあります。

 常時10人以上の労働者を使用する使用者は,就業規則を作成し,労働基準監督署に届け出なければなりません。そして,届け出た就業規則は,原則として事業場で働くすべての従業員に対して適用されます。
 そのため,嘱託社員に対しては,正社員との労働条件の差を考慮して就業規則に除外規定を置いて別に嘱託規程を設けることが有用ですが,正社員と共通する事項も多いので,就業規則で「準用」するという規定を置いて別規程を定めていないケースも少なくありません。
 後者のような規定の仕方をした場合には,就業規則のどの規定が準用されるかを就業規則や嘱託規程等で明確に規定しておく必要があります。この点を明確にしない場合には,争いとなって裁判に持ち込まれたときに,嘱託社員に対して思いがけず正社員の規定が準用されることがあり得ます。
 また,嘱託社員について就業規則の適用を除外しても,嘱託社員に対する別規則を設けていないと就業規則作成義務違反となるので注意が必要です。

 就業規則上,退職金支給規定がある場合に,嘱託社員に対して退職金を不支給とする場合には,@就業規則(退職金規程)において、適用する社員の範囲を明確に規定し、別に嘱託規程を設けて退職金を不支給とするか,A別途嘱託社員との労働契約において退職金不支給を規定することが必要です。
 Aの方法による場合には,個別労働契約より就業規則の効力が優先することを考慮すると(労基法93条,労契法12条),就業規則で嘱託社員については適用除外としておく必要があります。

 仮に@やAの方策をとっていない場合には,正社員の就業規則が準用される可能性があるとともに,募集条件等で退職金の不支給が明示されていれば,これが参考とされることもあり得ます。しかし,それもない場合には各社の採用時の説明内容,取扱いの実態や慣行の有無・内容によって処理されることもあります。
 これらの場合には,退職金の支給をしなければならないのかについて微妙な問題を残しますので,やはり@またはAの対応が是非とも必要となります。

 この点,判例においては,就業規則では正社員用のものしか作成していなかった事案において,地裁では退職金請求を認めませんでしたが,高裁においてはこれを減額したうえで認めたものがあります(大興設備開発事件,京都地判平成8.11.14・大阪高判平9.10.30)。
 また,就業規則が嘱託社員にも別に定めるものを除き準用されるとの前提の会社において,@嘱託契約を締結する前の当初の労働契約において退職金を支給しないことを合意していたこと,A嘱託契約においても内容的には基本的に従前の契約と同様であったこと,B嘱託契約締結に際して退職金の話が出なかったこと等を理由として,退職金を支給しない旨の黙示の合意が成立しているものとして,退職金請求を認めなかった判例があります(小型自動車開発センター事件,東京地判平成16.1.26)。
 但し、これらの紛争を回避するためにも、就業規則で明確に規定しておくべきでしょう。 詳細は、当事務所にご照会下さい。



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