No.64 懲戒解雇時の退職金不支給
 
 みなさん、こんにちは!

 4月は、新入社員が入社してくる時期です。

 私は、5時半頃には帰宅の途につくことが多いのですが、そんな早い時間に目立つのが若い男性の帰宅する姿です。そんな時間帯の通勤電車には、私のようなクタビレタ気味のロートル男性と若い女性そして何か落ち着かない若い男性と、とても珍しい組み合わせが乗り合わせます。

 そんな何か落ち着かない素振りの若い男性こそ、そう、キッと今年の新入社員なのでしょう。そして、その落ち着かなそうな姿こそ、厳しい経営環境の中でも会社の更なる成長と発展のためにと、経営者が熱い思いで迎い入れている期待の姿なのでしょう。

 然し、このような経営者の熱い思いを知ってか知らずか、今年入社してくる新卒者は、あの、名にし負う「ゆとり教育世代」の第一号です。 マスコミなどは、この世代への風当たりを強めているようですが、この世代に限らずここ数年の新入社員の傾向は、(他人にも自分にも)優しく、穏やかで、競争より自分らしさを大事にするといったタイプの人が増えてきているそうです。

 新入社員研修で"大きな声を出しなさい"と言われれば、"出し方がわかりません"などと真顔で答えてしまうようなタイプです。
 そして、これからの社会には、このようなタイプの人が、段々と増えて行くのは間違いのないところなのでしょう。

 今年入社の新入社員は、経営者からすれば、ほとんど宇宙人のようなものかもしれません。しかし、宇宙人を自称する日本の今の総理大臣とは違うのです。

 企業は、雇用を維持していくためにも、厳しい競争社会に生き残っていかなければなりません。そのためには、経営者は、この宇宙人たちに懲りずにしっかり躾をして、組織のコミュニケーション力を高め、組織力で他社と差別化して、しっかりと生き残り、企業をさらに発展させて行かなければなりません。それこそ、今の厳しい時代に経営者自らに課せられた任務なのだろうと思います。

 経営者には何時の時代も厳しく辛い役割を求められます。いつの時代でも、何をおいても働いている仲間とその家族の生活を守らなければならないからです。 こんな厳しい経営環境に喘ぐ今こそ、中小企業の経営者の活躍が期待されるのかもしれません。

 頑張れ、経営者!





 さて、 前回の「半日を休業した場合の手当」についての話、如何でしたでしょうか。

 今回は、「懲戒解雇時の退職金不支給」についての話をします。



――――――――――◆ 目 次 ◆――――――――――――――
○ 「懲戒解雇時の退職金不支給」
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 懲戒解雇というと会社の就業規則で、退職金不支給としている会社が多いと思いますが、それでも全額を不支給とするのは、中々難しいようです。

 この問題で争われた裁判例(平成16年、東京高裁)をご紹介します。
  "痴漢行為を繰返した社員を懲戒解雇とし、退職金を不支給とした"会社の措置に対して争われた訴訟です。

@事件概要
 ある鉄道会社で従業員Aが、電車内での痴漢行為を繰返し行ったため、会社Bは懲戒解雇を言い渡し、更に退職金も全額不支給の措置を採りました。これに対し懲戒解雇された元従業員Aは、"懲戒解雇は無効であり、退職金不支給措置も妥当でない"と主張し、退職金全額(920万円)を会社側に請求してきました。

 一審では会社側の主張が全面的に認められ、退職金の全額不支給措置は有効とされたのですが、二審では一転、"請求する退職金のうち「3割」は本人に支払うべきである"と会社側に命じました。

A判決詳細
 この元従業員Aは、痴漢撲滅キャンペーンを行っている鉄道会社に勤務していました。本来であればこういった犯罪を取り締まる立場であり、また痴漢行為が発覚した際、一度目は会社側も始末書及び降格処分という措置で本人に更正を促す機会を与えたにも関わらず、同じ行為を繰り返したので、懲戒解雇としたのです。
 こうした背景から、その懲戒解雇処分については一審、二審とも妥当とされました。
然し、退職金全額不支給については二審で認められませんでした。それは、本人側の下記主張が裁判所に認められたからです。

・退職金は賃金の後払い的性格を有し、老後の生活を補償するという意味合いがある点
・痴漢という行為は、法定刑だけをみれば軽く、 社会的には鉄道会社従業員として特に非難されるとはいえ、会社に対する直接の背任ではない私生活上の行為であり、会社には実質的な損害を与えたとはいえない点
・本人がこれまでの20年間職務に専念し、勤務態度も非常に真面目であった点

以上から退職金全額不支給措置は過酷な処分と判断された訳です。


 では何故"3割"が妥当とされたのでしょうか?
 これは、過去同社において発生した横領着服行為による懲戒解雇の事案において、退職金の30%が支払われた前例があることが考慮されたようです。
 この判決は、下記点の注意を喚起しています。

(イ)懲戒の対象となる労働者が携わる職種や 業界によって、特に高い注意義務やモラルが要求されることがあります。そうした状況下で、不祥事を起こしてしまった場合は、一般的に考えられる懲罰より重い懲罰を課しても許容される場合がある点
(ロ)退職金規程において、懲戒解雇の場合は全額不支給とする定めをしている会社は多いのですが、実際その規定通り懲戒解雇に該当するからといって退職金不支給としても、裁判で争われると、全額不支給は認められないことがある点
(ハ)判決の際は過去の"社内の処分事案も考慮"される点

 何れにしても、この判決は労働裁判の難しさを象徴しています。これに対処するためには、少なくても「就業規則」は現在の実態に適合した内容に整備しておくことが必須となるでしょう。

 今回は、ここまでです。



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